1 刑事事件の流れ

(1)逮捕
逮捕とは、犯罪の疑いがある人物(被疑者)の身体を拘束し、警察署内の留置施設などに留め置く処分をいいます。ここで重要なのは、逮捕はあくまで「被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぎ、取調べを行うなど、捜査を進めるために身柄を一時的に拘束する」手続きであり、「逮捕=有罪」ではないという点です。逮捕後に刑事処分を受けることなく釈放されるケースも多く存在します。そのため、逮捕されてから起訴されるまでの最長23日間の弁護活動が、前科がつくか否かを左右する極めて重要な期間となります。
警察官に逮捕されてからの流れは、法律によって厳格な時間制限が設けられています。警察官に逮捕された場合、まずは48時間以内に警察官による取調べを受け、その後検察官へ送致されます。送致を受けた検察官は、そこから24時間以内に自ら取調べを行います。そして検察官は、身体拘束された時から最長72時間以内に、引き続き身柄を拘束して捜査を行う必要があるかを判断し、裁判官に対して勾留請求を行います。裁判官がこれを認めると勾留が決定し、原則10日間、延長された場合は最長で20日間、さらに警察署内の留置場で身柄を拘束されることになります。検察官が勾留請求をしなかったり、裁判官が勾留を認めなかったりした場合には、被疑者は直ちに釈放されます。
逮捕後はすぐに取調べが行われるため、一刻も早く弁護士が面会に行き、今後の方針について話をしなければなりません。適切なアドバイスを受けられないままだと、捜査機関による自白の強要に応じ、ご本人にとって不利な供述調書が作成されてしまう恐れがあります。一度応じてしまった供述は、その後の裁判手続きにおいて非常に不利な証拠として働いてしまいます。また、今後の手続きの流れが分からず、ご本人が孤独と不安を抱え続けることになります。
弁護士が被疑者と早期に面会を行うことで、取調べに対する適切なアドバイスを行い、ご本人の不安を和らげ、不当な不利益を被ることを防ぐことができます。逮捕期間中は、弁護士のみが面会を行うことができ、ご家族であっても面会することはできません。弁護士が即日面会を行うことでご本人の状況を確認し、被疑者のみならずご家族の方にも大きな安心を与えることができます。
(2) 勾留
ア 勾留とは
勾留とは、逮捕に引き続き行われる身体拘束処分のことをいいます。逮捕後、裁判官が特定の要件に該当すると判断した被疑者について、起訴されるまで最大で20日間、身体拘束を継続します。勾留が認められる要件は、「被疑者が定まった住居を有しないとき」「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」「逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」の3つであり、このうちいずれか1つにでも該当すると判断されれば勾留が行われます。実務上、逮捕後に勾留まで行われる可能性は非常に高く、最近の傾向では逮捕された事件の9割近くで勾留が決定されています。
イ 勾留に対する準抗告
準抗告とは、裁判官が下した勾留決定に対する不服申立ての手続きです。勾留決定をした裁判官とは別の裁判官たちによって、本当に勾留の要件を満たしているのかどうかが改めて審理され、勾留する必要がないと判断されれば勾留決定が取り消されます。準抗告を認めてもらうためには、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがないことを、具体的な事実や証拠に基づいて客観的に主張する必要があります。準抗告が認められれば、逮捕期間の72時間のみで釈放されることになるため、身柄解放に向けて迅速に準備を行うことが極めて重要です。逮捕から勾留請求がなされるまでの時間は非常に限られているため、ご家族が逮捕された場合は一刻も早く弁護士へご連絡いただき、勾留を阻止・解除するための活動に着手する必要があります。なお、近年では弁護人による準抗告が認められる確率も高まっているため、早期に弁護士を選任して適切な弁護活動を行うことが非常に重要となります。
ウ 被告人勾留
被疑者段階で勾留されていた場合は、検察官に起訴された後も、そのまま継続して勾留(被告人勾留)されるのが通常です。しかし、被疑者段階の早い時期から弁護士が検察官と粘り強く交渉を重ね、示談の成立や適切な環境調整を行うことで、起訴される前に釈放を勝ち取り、在宅のまま裁判を待つ「在宅事件」へと切り替えられるケースもあります。
(3)処分について
検察官は、勾留期間が満了するまでに、処分保留で釈放するか、あるいは起訴処分か不起訴処分とするのかを決定します。逮捕・勾留期間を経て、検察官によって「裁判の開廷を裁判所に求めるべきか」が判断され、裁判所に公訴を提起することを起訴といい、公訴を提起しないことを不起訴といいます。また、起訴・不起訴の判断を検察官がその時点では確定させず、保留とすることを処分保留といいます。起訴された事件は原則として刑事裁判が開廷されることになり、起訴された事件の多くは有罪判決を受けることになります。
一方で、不起訴となった事件は裁判にかけられることなく、そのまま身柄を拘束されている場合は釈放され、事件は終了します。不起訴処分を獲得することは、被疑者にとって裁判を回避し、前科がつくことを防ぐことができるため、極めて重要な意味を持ちます。そのため弁護人としては、勾留満期までの限られた期間内に被害者との示談交渉を迅速に進めたり、捜査機関に都合のいい供述調書を作成されないよう被疑者に黙秘権の行使など適切なアドバイスを行ったりして、不起訴処分の獲得に向けた最善の弁護活動を行います。
(4)裁判
被告人が起訴された場合、刑事裁判を受けることになります。裁判において被告人は、主に起訴事実を認めて有利な事情を主張するか、あるいは無罪を主張するかを選択し、その主張に向けてどのように弁護側の法的な主張を組み立てていくかを検討します。起訴事実に争いがない場合であっても、被告人に有利な事情を的確に裁判官へ伝え、刑の減軽や執行猶予の獲得を目指すための活動を行います。
勾留されている被告人に対して執行猶予判決または無罪判決が言い渡された場合、勾留の効力が失われるため、被告人はその日のうちに直ちに身体拘束から解放されます。また、すでに保釈されていた被告人が執行猶予判決を受けた場合も、同様に勾留の効力が失われ、保釈決定もその役割を終えることになります。その後、裁判所に納めていた保釈保証金の還付を請求する手続きへ進むことになります。これに対して、保釈されていた被告人に対して実刑判決が言い渡された場合には、保釈の効力が失われるため、被告人はその場で身柄を拘束され、直ちに刑務所などの施設へ収監されることになります。
なお、第一審の判決内容に不服がある場合には、高等裁判所に対して控訴を行うことができます。しかし、上述のとおり保釈されていた被告人であっても、実刑判決の言い渡しを受けると直ちに収監されてしまいます。そのため、控訴審においても引き続き保釈による身柄解放を希望する場合には、控訴の申立てと同時に、改めて裁判所へ保釈請求を行うことが強く望まれます。判決言い渡し後に速やかに身柄解放を求めるため、判決当日までに控訴の準備と保釈請求の準備をあらかじめ並行して進めておく必要があります。